「チラシの裏」と言う俗語、インターネットでは度々お目にかかりますね。これはチラシが片面印刷の頃、何も印刷されていない裏面を手近なメモ帳代わりとして使っていたために生まれた言葉です。しかし現在ではチラシ印刷の主流は「両面印刷」となり、「裏側が白いチラシ」はほとんどお目にかからなくなりました。そして宣伝チラシに「表と裏」ができ、消費者側もその存在に慣れたことは、チラシ作りの在り方を大きく変えます。「チラシの表と裏」--それぞれの特性を活かしたチラシ作りができているかどうかが、集客率や売上を大きく左右するようになったのです。
「裏側だから」「目立たないから」とチラシ裏面作りの手を抜いていては、集客アップ・売上アップは見込めません。反対に「チラシ裏の特性」を理解すれば、チラシの「表」で掴んだ顧客の集中力を切らさずに、購買行動に繋げることもできるのです。今回はより多くの見込み客を掴むための、チラシの裏面デザインや掲載情報選びのポイントをご紹介していきます。
チラシ裏面には何を載せる?掲載情報のポイントと例
チラシの「表」と「裏」の違いとは
チラシの裏面作りを成功させるには、チラシの「表」と「裏」それぞれの役割を認識する必要があります。
【チラシの表面の役割】
・他の宣伝チラシより目立つこと
・顧客の目を引くこと
・顧客のニーズを呼び起こすこと
・製品・サービスの最たる特徴を理解させること
ポスティング等で郵便受けに投函されたり、手渡しをされたチラシに対して、顧客は目に入った「最初の1秒」でチラシを読むかどうかを決めてしまいます。ですからチラシの表面では、以下のような点が重要となるわけです。
【チラシ表面で重視されるポイント】
・字(フォント)が大きく目立つか?
・画像が大きくキレイで目を引くか?
・カラーリングが印象的か?
・キャッチコピーが短くわかりやすいか?
・製品・コピーにインパクトがあるか?
・製品・サービスの「個性」がアピールできているか?
ところが上記のような点を重視すると、どうしてもこぼれ落ちてしまうものがあります。それが「情報量」や「信頼性」です。説明文の字を大きくすればするほど、掲載できる情報が減るのは当然ですね。また、例えば「1月で5キロもダウン!」と書いてあるエステのチラシを見て心を惹かれても、そのキャッチコピーだけで即時に来店を決める顧客は居ないでしょう。
「5キロ減らせそう!と」顧客が納得できる「裏付け」や「説得力」が、チラシ表の情報だけではまだ得られません。つまり「実際に来店する」「実際に申し込みをする」といったアクションを起こすためには、チラシの裏面で以下のような要素を追加する必要があるのです。
【チラシの裏面の役割】
・製品・サービスの魅力に「説得力」をもたせるサブ情報を追加する
・表面で生じた顧客の「不安」や「疑問」を素早く取り除く
・表面で紹介しきれない詳細情報をカバーする
・表面で生まれたニーズを「購買欲求」へと押し上げる
・顧客が「買わない理由」をなくしていく
・顧客をスムーズに来店・申込アクションへ誘導する
チラシの裏面とは、チラシと顧客のファーストインプレッションから購買行動へと繋げる「橋」のような存在と言えるでしょう。
チラシ裏面の掲載情報例
では実際にどのような情報がチラシの裏面に掲載されるのでしょうか?その例を見ていきましょう。
1.定番・普遍的な商品の情報
チラシの表面では、「目玉製品」や「季節性の高いサービス」等、いま最も顧客にアピールしたい商品を紹介していきます。表面ではこのような「限定性の強い製品」のみに絞って紹介点数を抑える分、裏面ではその他の定番メニューや製品をご紹介し、取扱の幅広さをアピールしてみましょう。
・飲食店の通常メニュー
・ヘアサロンの基本メニュー表
・小売店の目玉商品以外の人気製品 等
表面で店に興味を持った顧客の「他のメニューももっと知りたい!」という欲求を裏面で満たせば、顧客の興味は更に高められることに。また店舗の全体的な価格帯を知らせることで顧客の不安も解消され、来店アクションへと繋げやすくなります。
デリバリーピザ・宅配弁当・宅配寿司等の場合には、全メニューの記載が必要なのは当然ですね。それ以外の場合には、すべてのメニュー・サービス内容を無理に掲載する必要はありません。顧客が「どのようなバリエーションがあるのか」「料金価格帯はどの程度なのか」といったザックリとした印象を把握できるよう、代表的な定番メニューのみに絞り込んでもOKです。
2.裏付けデータ
チラシの表側でアピールした商品の「効果」や「人気ぶり」について、顧客は興味を持ちつつも「本当かな?」と疑念を抱いています。このような顧客の「不安」を取り除くべく、商品の魅力の「裏付け・証拠」となるデータや情報を提示していきましょう。
・顧客満足度の推移表
・製品の受賞履歴
・健康食品の成分の詳細データ 等
3.Q&A、FAQ(よくある質問)
見込み客は広告を見た時に、製品・サービスに対して様々な疑問を持つものです。例えば「全額返金保証!」と書いてあった場合、「開封しても返金してくれるのだろうか」と疑問を持ちますよね。しかし多くの見込み客はこのような疑問があっても、わざわざ企業に問い合わせはしません。「疑問があるけれど問い合わせるのは面倒→買わない」という考えに行き着いてしまいます。
顧客にスムーズに購買・申込みに移らせるには、顧客がもっとも気になるである「疑問」を事前に想定し、早めに解消してあげることが大切なのです。
ここで活躍するのが「FAQ(よくある質問)」!質問・回答コーナーを作っておけば、顧客の疑問の80%~90%程度はカバーすることができます。
・通信販売で「送料はかかる?」「どれくらいで届く?」
・エステサロンで「無理な勧誘は無い?」「予約はちゃんと取れる?」
・学習塾て「子どもがわからないと言っても平気?」「家庭教師とどちらが良い?」等
・ヘアサロンで「ヘナカラーって何?」「デジタルパーマとは?」等
4.お客様の声・ビフォーアフター
商品を使った他の客の姿(モデルやモニター等)を見込み客に見せてあげると、客をそれらの「他の客の姿」と自分と重ね合わせて共感・想像することができます。
「良さを実感できた」「使ったことでより良い自分になれた」という他の客による文章を読むことで、「自分も商品を使えばこのようになれる!」というイメージ(ベネフィット)を持つことができ、これが購買意欲に繋がるのです。またサービス使用前・使用後の様子が見られる「ビフォーアフター画像」を取り入れることでも、顧客の信頼感をアップできます。
・健康食品での「利用者の感想文(手書き)」
・ヘアサロンでのモニター利用者の画像
・エステサロンでの「お客様の声」とモデル画像 等
5.ヒストリー情報
まだ名前が売れていない中小企業や製品に対しては、顧客は「知らない=信頼できない」という疑念・不安を抱いています。このような不安を和らげるために、企業や店舗・製品についての由来や歴史、詳細情報を知ってもらいましょう。
・飲食店シェフの経歴
・講演会の講演者の経歴
・店の名前の由来や歴史
・原料の生産地情報
・製品の生産プロセスの詳細な説明
・サロンや飲食店店舗・クリニック等の施設内部写真 等
6.アクセス方法
「スマホがあれば、客は自分で調べてくれるだろう」という思い込みは厳禁です!見込み客側は「自分自身で調べる」という手間を激しく嫌います。チラシを見てどんなに興味が湧いたとしても、店舗の場所がわかりにくければ「面倒だ、もう行かない」という判断をされてしまいかねません。
顧客が「行ってみようかな?」「申し込んでみようかな?」「この店のことをもっと知りたい!」と考えたその瞬間を逃さないよう、アクセス方法はわかりやすく掲載する必要があります。
・店舗マップ(実店舗の場合)
・問い合わせ・予約用電話番号
・店舗住所(営業時間・営業日)
・問い合わせ・予約フォームやメールアドレス(QRコード)
・ホームページのURLとGoogleでの検索ワード
・SNSのID(Twitter/LINE/Facebook/Instagram等)
チラシ裏面デザインのコツ
掲載情報が決まったら、チラシ裏面のデザインを考えていきましょう。チラシ裏面では表面とは異なり、以下のような点に気を配ります。
1.「タイトル」「中見出し」で内容をアピール
チラシの裏面では、前述したように様々な詳細情報を掲載していく必要があります。そのためチラシの表に比べると、説明文等のポイント数(字の大きさ)が小さくなってしまいがちです。文字がビッシリと並んでいるだけのチラシは「読みにくそう」「難しそう」と感じられ、読むのを途中で止められてしまう恐れがあります。
こんな時には段落ごと・項目ごとの「タイトル」や「中見出し」部分に気を配ってみましょう。それぞれの段落に書いてあるタイトルや見出しを読むだけで、読者が段落のおおまかな流れが把握できるようにしてみてください。内容の話の流れが見えれば、顧客は「ここを知りたい!」というポイントを選びつつ読むことができます。
2.「表」「グラフ」を使ってみよう
経歴や社歴、製品の成分、料金、顧客の満足度等の数値…このような細々としたデータ類は、文章で説明しようとすると話が長くなってしまいがちです。ひと目で情報が把握しやすい「表」や「グラフ」を作って、情報はスッキリとまとめましょう。数値類はグラフ化することで視覚的インパクトを与えやすくなるほか、顧客への説得力もアップさせる効果も持っています。
【表にまとめられるもの】
・シェフや講演者の経歴
・企画の日程
・メニューと価格表 等
【グラフにできるもの】
・リピート率
・顧客満足度
・売上の推移 等
3.単色刷りでも大丈夫?
シンプルな片面印刷に比べると、両面印刷は単価が上がってしまいがち。特に両面カラーだと料金が高くなるので「チラシのウラ面だけは黒白印刷か単色印刷にしたい…」と考える方も多いですよね。確かにチラシの裏面は補足的な情報を掲載する部分なので、インパクト重視のチラシの表に比べれば「カラー刷り」にこだわらなくても良い時もあります。しかし場合によっては雰囲気を損ねてしまうこともあるので、TPOや企業・商品の特性に合わせた使い分けをすることが大切です。
【単色刷りでOKの場合】
・庶民的な雰囲気をアピールしたい
・親しみを出したい
・オトク感を出したい
・割安なイメージを与えたい
【両面カラー刷りの方が良い場合】
・高級感を出したい
・特別感をアピールしたい
・居心地の良さを強調したい
・信頼性をアップさせたい
例えば同じ「飲食店」の宣伝チラシでも「安さがウリの居酒屋」ならば「ウラ面単色刷り」でOKです。しかし「デートで使ってほしいバー」ならば「両面カラー」の方が、店舗の雰囲気の良さ・高級感がアピールしやすいですよね。美容院やヘアサロン・エステサロン等の美容関連の店舗の場合には特に「視覚的なイメージの良さ」が重視されやすいので、両面カラー印刷の方が良いでしょう。
なお両面カラー印刷のチラシをデザインする場合には、表面・裏面両方のカラーのトーンを揃えることも大切です。「裏返したら印象がまったく違う!」とならないように、テーマカラー等を揃えて統一感のあるデザインを心がけましょう。
4.アクセス情報は最後に!
人間がチラシに目を走らせる時の「目を動かす順番」は、無意識のうちに決まっていることは知っていますか?チラシデザインを作る場合には、以下のような「目の動線」を意識します。
【横書きのチラシの場合】
チラシの左上→中心→右下(アルファベットのZのように動く)
【縦書きのチラシの場合】
チラシの右上→中心→左下(アルファベットのNを右上から書いたように動く)
つまり「右下」もしくは「左下」の部分が、顧客が最後に目をやるチェックポイントとなるわけです。店舗のマップや電話番号・申込み方法等がここに書いてあれば、顧客はスムーズに購買・申込・来店行動に移れるのですね。
5.「何」に誘導したいのか?
「アクセス情報を最後に書けば良いから」といって、店舗の電話番号も住所もメールアドレスも同じ字の大きさでズラズラと並べるだけ…これではNGです!
様々なアクセス情報の中でも「優先順位」をつける必要があります。例えば「申し込みの電話」を入れてほしいのであれば、店舗や企業の「電話番号」を最も大きく書くべきですよね。各事項の優先順位の順番を考え、字の大きさやフォントの太さを決めていきましょう。
希望:予約は不要なので直接来店してほしい、休業日はチェックして欲しい
・最優先→店舗マップ
・優先→営業日・営業時間
・電話番号やメールアドレスは補足情報なので小さくてOK
希望:個人経営なので、LINEでの予約を推奨したい
・最優先→LINE IDと「LINEお友達からの予約で10%OFf!」の文字、LINE登録へのQRコード
・優先→電話番号、店舗地図
・次点→InstagramのID
・メールアドレス・公式サイト情報は補足情報なので小さくてOK
来店なのか、Webへのアクセスなのか、電話申し込みなのか…上記のように「お客様に何をしてほしいのか」「どんな手段でのアクセスがほしいのか」を想定すると、誘導先が決めやすくなりますよ。
おわりに
チラシ裏面のデザインや掲載情報のポイントはいかがでしたか?チラシの表・裏それぞれの役割を考えた上で制作すると、チラシ全体の印象は大きくアップします。「現在のチラシだと反応率が良くない」「もっとチラシ宣伝での売上をアップさせたい」という人は、ぜひチラシ裏面に再注目してみましょう。